引きこもり令嬢の契約婚約
 ソフィアはその後、セアラに向きなおり、神妙な顔をする。

「セアラ様。社交界はこうやって、高位の令嬢が舵を取ってご婦人方の間を円滑に回していくものなのですよ。あなたはあまり夜会にも、お出にならないでしょう? きっとアドレイド様は心配してくださっているんですよ」
「そ、そんなつもりじゃないわ……」

 アドレイドの表情が固まって、恥ずかしそうにそっぽを向いた。
 ソフィアはセアラを助けてくれるではなく、アドレイドの立場も守ろうとしているようだ。

(公平でいつも冷静で……やっぱりソフィア様ってすごい)

「はい。……ありがとうございます、アドレイド様」
「そ、そうよ。あなたみたいな引きこもりをどうしてエリオット様は……」

 そのとき、ポロリとアドレイドの瞳から涙がこぼれる。

「アドレイド様」
「し、正直に言えば、王太子妃はあなたにはふさわしくないわ! あのエリオット様の隣に立つのよ。誰より美しくなきゃいけないし、堂々としていなきゃいけないわ。……どうしてあなたみたいに、引きこもりの気弱そうな人に……」

 ソフィアは静かに立ち上がり、アドレイドにハンカチを渡して背中をさすった。

「仕方ありませんわ。アドレイド様。エリオット様の趣味がおかしいんです」

 身も蓋もないことを言い出して、アドレイドも驚きで目を見開く。

「私、昔から交流がありますけれど、あの方、少し夢見がちなんですのよ。芸術にうつつを抜かして、地に足のついた施策ができるのか不安になりますもの」
「そ、ソフィア様」
「あら。うっかり本音が。ここだけの話にしてくださいませね。おふたりとも。ほほ」

 ソフィアは悪びれず笑うと、一度真顔に戻る。
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