引きこもり令嬢の契約婚約
「何よ、その顔。あなたはおかしいと思わないの? 私は間違いなくお父様の血を継いでいるのに、なぜ跡を継ぐことが許されないの? 男だったら許されるのに?」
「それは……」
そういうものだと思っていた。だから、疑問にさえ思っていなかったのだ。だけど言われてみれば、確かに女であるだけで、子であることに変わりはない。
「確かに法律は守るためのものよ。それが秩序と安定を生むわ。だけど、間違っている部分は直していくべきなの。そのために、私はできれば、エリオット様を味方につけたいの。王太子妃にも話の分かる方になってほしい」
ソフィアの目には迷いがない。
「そういうわけだから、私のことは心配しないで、エリオット様と仲良くやって頂戴。アドレイド様が今日のように何かしてくるようなら、私が助けてあげるから」
「あ、ありがとうございます」
そう言われても素直に頷くこともできない。セアラとエリオットの関係はあくまで契約によるものだ。
(なのに、なんでほっとしているのかしら)
ソフィアが王太子妃の地位を欲していないと知って、残念に思う気持ちと安堵の気持ちが入り混じっている。
(いつかソフィア様が王太子妃になってくれるって安心していたはずなのに)
セアラは自分の気持ちをうまく言語化することができない。
やがてメイドがお茶を運んで来て、支度が整うまでの間、セアラは黙っていた。
後ろ暗い気持ちがずっとあって、心が晴れない。