引きこもり令嬢の契約婚約
「そういえば、ひとつ謝りたいことがあるのよ。子供の頃、私、あなたにきついことを言ったわね。ごめんなさい」

 突然、ソフィアがぽつりと言いだした。

「え? いえ、そんな、ソフィア様の言っていたことは何も間違ってなど……」
「正論がいつも正しいわけじゃないわ。私ね。あの頃、あなたが羨ましかったのよ。あのご招待の日、いつもは父と喧嘩ばかりしているシーグローヴ侯爵が私に向かって言ったの。『セアラはずっと田舎で暮らしていたから友達がいなくてね。よかったら仲良くしてやってほしい』って」
「お父様が?」
「頭まで下げたのよ。私は大人が私に頭を下げることが不思議で、でもそれをあなたの為にやったんだって思ったらなんだか悔しくなって。あなたが羨ましくなったの」
「でもあの時、ソフィア様は意地悪な男の子たちから私を守ってくれました」
「でもあなたの友達にはなれなかったわ」
「私も弱かったからです」

 セアラが笑うと、ソフィアは微笑んで手を差し出した。

「学園に通っていた間も、どう声をかけていいのかわからなかったのよ。お父様も、シーグローヴ侯爵の娘とは仲良くなるなってうるさかったしね。ねぇ、今からならなれるかしら」
「えっ……」
「私と、友達に。いや?」
「まさか。嫌だなんてそんなわけ……。でも私、この通りどんくさくて世間知らずで、その……ソフィア様の友達だなんておこがましくて……」
「あら。私はこれでも、あなたには一目置いていたのよ。学園での成績はいつも上位。論文も理路整然としていたわ」
「そんな……」
「嫌じゃないなら、決まりね」

 ソフィアはそうまとめると、セアラの手を握った。
 綺麗に整えられた爪、すべすべの柔らかい肌。薬草を育てるために土仕事をするセアラとは何もかも違う。

(でも、ソフィア様にそう言ってもらえるのは、うれしい)

「私で、いいんですか?」
「もちろんよ。仲良くしましょうね、セアラ様」

 セアラが安堵の息を漏らすと、ソフィアはにっこりとほほ笑んだ。

「あなたがエリオット様といて困らないよう、しっかり指導してあげるから」
「え? あ、……ええ?」

 その後、目の前に用意されたお茶道具で、お茶会の作法を指導される羽目になったセアラだった。

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