引きこもり令嬢の契約婚約
「……でも、今までが逃げ過ぎていたのかなという気もしています。ソフィア様を見ていたら、そんな気がしてきました」
「ああ。ソフィア嬢に礼儀作法を教えてもらっているんだってね」
「ご存じなんですか?」
「シーグローヴ侯爵からね。嬉しそうだったよ。その脇で、オルセン侯爵が苦虫をかみつぶしたような顔をしていた」

 それはありありと想像できたので、おかしくなって笑ってしまう。

「君の家は親子仲がいいよね」
「そうでしょうか。父は私のこと、困った引きこもりだと思っているでしょうけど」
「そうかな。かわいくて仕方がないように僕には見えるよ」

 セアラは文句ばかり言われているような気がするけれど、他人から見ればそうなのだろうか。

「それは……くしゅん」
「おや、寒い?」

 エリオットはすぐに上着を脱ぐと、セアラの肩にかけてくれる。あまりにも自然に紳士的な仕草をされて、セアラはなんだか気恥ずかしくなり目をそらした。

「すみません。中に入りますか?」
「いや、……君が大丈夫なら、ここで話したいな」
「でも」
「ここなら、君が自然体だから」
「え……」

 エリオットの顔を見ようと振り向いたけど、影になっていてよく見えない。だけど、セアラの胸はなぜだかひどくドキドキしていた。

「ほら、人の中にいると君は緊張するみたいだし、……僕らは契約関係なんだから、もっと素をさらけ出して話したいなって思ってさ」
「あ、……そ、そうですね」

 エリオットの上着から伝わる温かさに、ふと、母の言葉を思い出す。
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