引きこもり令嬢の契約婚約
 しんみりとした話をしてしまったと、セアラが切り替えて顔を上げた時、エリオットの顔が見えた。

(え? 顔が赤い……?)

 照れたような、驚いたようなそんな表情に見とれていると、彼は軽く咳ばらいをして、いつもの笑顔に戻った。

「……それは光栄だね。僕も君の手を引いて歩けることがうれしいよ」
「なっ……」

 社交辞令にしてもなんてそつのないことを言うのか。
 セアラも恥ずかしくなってしまって、顔が熱くなる。

「君の父上に負けないくらい、温かい場所を作ってあげられればいいのだけど」
「そこまで居心地よくなったら、婚約破棄できなくなってしまいますよ」

 笑って流しても、エリオットは微笑んだままだ。
 場を和ますための言葉だったのかなと、内心で寂しく思いながら立ち上がる。

「そろそろ着替えてまいります」
「ああ。今日は僕が乗ってきた馬車で一緒に城まで行こう。帰りも送るよ」
「でも……」
「いいじゃないか。君と少しでも長く話したいんだ」

 甘いマスクで、甘い言葉をあまりにもさらっと言われて、社交辞令だと分かっていても頭がショートしてしまう。

「で、では着替えてまいります」
「ああ。では僕は馬車で待っていよう」 

 庭園から屋敷に入るまでもエスコートされ、セアラは気恥ずかしさでどうにかなってしまいそうだった。
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