引きこもり令嬢の契約婚約
「まさか。……ソフィアは今頃反抗期のようでしてね。私の言うことなど聞かないんですよ」
「それは気の毒だね。……侯爵の教育ミスでは?」
「エリオットさま?」

 笑顔で挑発するようなことを言うのはやめてほしい。慌てて止めようと思わず手が出てしまい、唇に手が触れたところで我に返る。

「あっ……ご、ごめんなさい」

 オルセン侯爵も、セアラの予想しない行動に驚いている。エリオットは、にっこりとセアラの伸ばした手を取り、甲にキスをして返す。

「はは、たまに大胆にされるのもうれしいものだね。侯爵、悪いけど予定が詰まっているんだ。失礼するよ」

 そう言うと、セアラの腰を掴み、歩き出す。

「す、すみません。エリオット様」
「いや。僕はうれしいけど。侯爵の言うことも、文官たちの噂話も気にすることはないよ。いずれ払しょくできることだから。……まあそう言っても、気にはしてしまうのだろうけど」

 腰に添えられた手にやや力が入る。気にしてしまうのは仕方のないことだけど、それをエリオットが分かってくれているというだけで、心が温まるのを感じる。

「……大丈夫、です」
「婚約式が終われば、文句を言う人間は減るはずだから」

 エリオットは、教室になっている部屋まで送ってくれた。

< 62 / 233 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop