引きこもり令嬢の契約婚約
 これから二時間、妃教育の女性教師との授業が始まる。セアラは、座学が得意だ。本を読むのも苦ではないし、記憶力もいい。

「正解です。大変優秀ですね」
「ありがとうございます……」

 それが終わると、礼儀作法の時間だ。この時間は、ソフィアが王城に来てくれて指導している。当初はもうひとり、ちゃんと礼法の教師がついていたが、セアラの緊張がひどくて授業にならず、加えてソフィアの立ち居振る舞いが完ぺきだったため、彼女に任されることとなったのだ。

「ソフィア様お待たせしました。すみません」
「謝ることないわ。あなたはいずれ、この国で最も高位の女性となるのだから」
「でもお待たせしたことは事実です。偉ぶるのは苦手です」
「そう? 謙虚さは美徳かもしれないけれど、王太子妃には必要ないものよ?」

 言い出したら譲らないソフィアを説得することは諦め、セアラは笑ってごまかした。

「ではまず姿勢からです」

 ソフィアは案外スパルタで、この一時間は先の座学よりもよっぽど疲れる。
 しかし、終了後はソフィアと軽くお茶会をすることになっていて、これまで友人がいなかったセアラにとっては楽しい時間となっていた。

「今日、オルセン侯爵にお会いしました」
「また嫌味を言っていたのではないの? あの人の言うことは気にしなくていいのよ。頭が固いのだから」
「でも事実ですから」

 セアラが目を伏せてそう言うと、ソフィアは少し困った顔をする。

「事実だからといって、すべての悪意を受け止めることはないわ。あなたに必要なのは、自分に自信を持つことね。あなたは成績も立派だし、殿下の隣に立っても見劣りすることはないわ。堂々としていなさい」

 自信がない、は父にも言われた。別に自信がないわけではないが、事実としてセアラは人間関係をうまく回すことができない。言い返すのは苦手だし、少しでも自分に非があると思えば謝ってしまう。
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