引きこもり令嬢の契約婚約
 あいまいに微笑んでいると、ソフィアがため息をつく。

「まあいいわ。そこを引き出すのは私の仕事じゃないわよね。エリオット様にお任せしましょう」
「私とエリオット様は、ソフィア様が思っているような関係ではないです。あくまで政略結婚ですよ」
「あら、政略で選ぶなら、アドレイド様でいいんだもの。あなたを選んだのには、意味があるのよ」

 やがて赤毛の騎士が迎えに来ると、ソフィアとの交流の時間は終わる。その頃を見計らって、エリオットがやってきた。

「セアラ嬢。今日の課題は終わったんだろう? 少し話さないか?」
「ほらほら、来たわよ。ではお邪魔虫は帰りましょう。レナルド」

 ソフィアは赤毛の騎士に近づき、腕を取る。
 思えば、基本令嬢に付き従うのは侍女が多いのだが、ソフィアのおつきはいつもあの騎士だ。

(気安い存在なのかしらね)

「御前、失礼いたします。エリオット殿下、セアラ様」

 レナルドがゆったりと礼をし、ソフィアをエスコートした。

「ソフィア様の護衛騎士は……」
「レナルド・ホールデン。ホールデン伯爵家の次男だね」
「伯爵令息なのですか」
「……なに? 気になるの?」

 いきなり顔を覗き込まれ、セアラは距離の近さに驚く。

「いえ! 別に。ただソフィア様と仲がいいなと思っただけです」
「あんまり妬かさないでほしいな。こっちにおいでよ。そろそろ月が見える時間だ」

 もう夕暮れだ。今からなら、父と一緒に帰れるだろう。

「エリオット様。帰りは送ってくださると言っていましたが、時間的に父と帰ります」
「そう? では、侯爵には伝言しておこう」

 エリオットは通りすがりのメイドに伝言を頼むと、セアラをベランダまでエスコートする。
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