引きこもり令嬢の契約婚約
「ちょ、離れてください」
「まあまあ、婚約者同士のふれあいということで」
「ホワイティ様の機嫌をこれ以上損ねたくないです」
「大丈夫だよ、ホワイティは……」
その時だ。先ほどより温度が低い風が、突然エリオットたちを襲った。
「……この風は、ホワイティか。ちぇっ、怒られたな」
「ほら! やめてくださいよ。私はホワイティ様と仲良くなりたいのに!」
「わかったわかった。中に入ろうか。そろそろシーグローヴ侯爵の仕事も終わった頃だろう」
バルコニーから出ると、そこにはオルセン侯爵がいた。
「おや、嫌だな、オルセン侯爵。我々の逢瀬を覗き見とは」
「通りかかっただけです。……仲はよろしいのですな。お二方は」
「いえ、その……」
否定しようとしたセアラを隠すように、エリオットが前に出る。
「そうだね。素敵な人と出会えて、感謝しているよ」
「はは。あんなに見合いから逃げていた方のセリフとは思えませんな」
「行こう、セアラ」
「は、はい」
オルセン侯爵に見せつけるためだったのかもしれないが、急に呼び捨てにされ、セアラは困惑してしまった。
「おや、エリオット殿下。セアラを連れて来てくださったのですか」
「ああ。シーグローヴ侯爵。彼女を長く引き留めてしまって悪かったね」
「いいえ。さあ、マイルズが待っているな。帰ろう、セアラ」
「はい」