引きこもり令嬢の契約婚約
婚約式でハプニング
いよいよ婚約式の日がやってくる。
緊張でよく眠れなかったセアラの顔色は悪い。
「大丈夫、姉さま」
「マイルズこそ、なんか青い顔をしているわよ」
「僕のことは心配しないで」
いつも朗らかなマイルズが、最近おとなしいことには気づいていた。が、セアラはセアラでここのところいっぱいいっぱいで、それを追求する余裕はなかった。
「朝食はいいわ。食べたら吐いてしまいそう」
朝一で王城に行き、婚約式用のドレスに身を包まねばならない。
「また後で会いましょう。お父様、マイルズ」
「倒れないでよ、姉さま」
「分かっているわ!」
*
(……なんて豪語したけれど、やっぱり少しくらい食べてこればよかったかしら)
せめてもの慰めにと、リラックス効果のあるオレンジブロッサムの精油を持ってきたけれど、その香りを嗅いでも、跳ねる心臓は収まらない。
セアラは現在、用意された控室でドレスを着つけてもらっている。たくさんの使用人が出入りして、会場との段取りのチェックをしている声が聞こえてくる。
(婚約式をして、……一年後には婚約解消して……)
そういう約束だったし、それを望んでいた。でも、こうしてたくさんの人が婚約式の為に準備をしている姿を目の当たりにしたら、自分のしていることが恥ずかしくなってきてもいた。
(あんなに一生懸命な人たちを騙すなんて……私はなんて考え無しだったのだろう)
とはいえ、ここまで来て後戻りもできない。加えてセアラは、自分のエリオットに対する感情が、恋慕なのだと気づいている。
(……契約相手に恋をするなんて、不毛だわ。私ってなんて馬鹿なの……)
「できましたよ。セアラ様」
その言葉と同時に眼鏡が渡される。それまで、ぼやけていた視界がくっきりし、セアラは鏡の中にいる自分の姿に驚いて息を飲んだ。
「お美しいです!」
さすが王城のメイク係は一流だ。肌の色はいつもよりも白く、それでいて頬には赤みがあり愛らしい仕上がりになっている。
まつげがしっかりと上向きになってせいか、目も大きくぱっちりとして見える。加えて、パールピンクのドレスには、胸元にフリージアのような飾りがついており、清楚でかわいらしい。
「素敵……」
「ええ、本当に。お似合いですわ。セアラ様」
緊張でよく眠れなかったセアラの顔色は悪い。
「大丈夫、姉さま」
「マイルズこそ、なんか青い顔をしているわよ」
「僕のことは心配しないで」
いつも朗らかなマイルズが、最近おとなしいことには気づいていた。が、セアラはセアラでここのところいっぱいいっぱいで、それを追求する余裕はなかった。
「朝食はいいわ。食べたら吐いてしまいそう」
朝一で王城に行き、婚約式用のドレスに身を包まねばならない。
「また後で会いましょう。お父様、マイルズ」
「倒れないでよ、姉さま」
「分かっているわ!」
*
(……なんて豪語したけれど、やっぱり少しくらい食べてこればよかったかしら)
せめてもの慰めにと、リラックス効果のあるオレンジブロッサムの精油を持ってきたけれど、その香りを嗅いでも、跳ねる心臓は収まらない。
セアラは現在、用意された控室でドレスを着つけてもらっている。たくさんの使用人が出入りして、会場との段取りのチェックをしている声が聞こえてくる。
(婚約式をして、……一年後には婚約解消して……)
そういう約束だったし、それを望んでいた。でも、こうしてたくさんの人が婚約式の為に準備をしている姿を目の当たりにしたら、自分のしていることが恥ずかしくなってきてもいた。
(あんなに一生懸命な人たちを騙すなんて……私はなんて考え無しだったのだろう)
とはいえ、ここまで来て後戻りもできない。加えてセアラは、自分のエリオットに対する感情が、恋慕なのだと気づいている。
(……契約相手に恋をするなんて、不毛だわ。私ってなんて馬鹿なの……)
「できましたよ。セアラ様」
その言葉と同時に眼鏡が渡される。それまで、ぼやけていた視界がくっきりし、セアラは鏡の中にいる自分の姿に驚いて息を飲んだ。
「お美しいです!」
さすが王城のメイク係は一流だ。肌の色はいつもよりも白く、それでいて頬には赤みがあり愛らしい仕上がりになっている。
まつげがしっかりと上向きになってせいか、目も大きくぱっちりとして見える。加えて、パールピンクのドレスには、胸元にフリージアのような飾りがついており、清楚でかわいらしい。
「素敵……」
「ええ、本当に。お似合いですわ。セアラ様」