引きこもり令嬢の契約婚約
 これは本当に自分なのか信じられないくらいだ。あまりに綺麗に仕上げてもらったので、眼鏡をかけることでバランスを崩してしまうのではないかと、申し訳なくさえ思う。

「早くエリオット様にお見せしたいですね」

 侍女は明るくそういうけれど、セアラはだんだん恥ずかしくなってきた。
 自分のような地味な存在が、こんな格好をしてもいいのだろうかと。
 その時、扉がノックされた。

「準備は終わったかい」

 扉越しの声はエリオットのものだ。侍女たちは顔を晴れ渡らせて扉を開ける。

「今終わったところです。どうぞ、エリオット様」
「入るよ。セアラ……」

 いつもにこやかなエリオットが、驚いたように目を見開き、次の瞬間、目を細めた。
 彼はすでに着替えを終えていて、白地に金の刺繍がされた礼服が、とてもよく似合っている。金色の髪も相まって、全身が光っているかのようだ。
 セアラは眩しくて、思わず目をつぶってしまった。

「きれいだ。そのドレスもよく似合っているよ」
「あ、ありがとうございます」
「緊張していないかい? 僕は恥ずかしながらよく眠れなかった」
「私もです……」

 セアラは気分が顔に出る方だから、ひどい顔をしていないか心配だ。

(人前にでるのだから、しっかりしないと)

 エリオットは、言うほど悲壮な顔はしていない。相変わらずの穏やかな微笑みだ。

(でも、本心は違うってことかしら)

 いろいろな思いを抱えつつ、笑顔でポーカーフェイスができるのは、すごい。感心するのと同時に、胸がきゅっと切なくもなる。
 思った通りの表情を、思った通りの気持ちを、セアラが表せるのは、今までずっと誰かに守られてきたからだ。甘えてきたことに、時折こうして気づかされる。
 セアラとエリオットは、たった二歳違うだけなのに。
< 69 / 233 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop