引きこもり令嬢の契約婚約
 セアラは思わずエリオットの顔を見上げた。

「せ、聖獣様の祝福なんてあるんですか?」
「……さあ。僕も知らないけど」

 王族の婚約など頻繁にあるものではないし、彼の姉であるフィオナは人質という形で嫁いだ上に、当時は聖獣の加護も得ていなかった。エリオットも自身は本当に知らないのだろう。

「聞けば、ホワイティ様はエリオット様のご婚約には反対されていたとか」
「まあ、どうしてですの? おめでたい話なのに」
「セアラ嬢では不満ということか?」

 参列する人々がざわつく。
 セアラは、聞こえてくる言葉に突き刺されるような気がして、胸元を押さえた。

「聞かなくていい、セアラ」

 エリオットの手が、セアラの肩を抱く。伝わる体温が、セアラのこわばった体を少しだけほぐしてくれた。

「……いい加減にしないか! 婚約式に聖獣の加護のお披露目などはない!」

 場を制したのはルパート王で、ざわめきは一気に静まり返る。
 しかし、それまでの和やかな雰囲気は一蹴し、誰もが、どこか猜疑的な視線をセアラに投げかけていた。

「本日は私たちの為に集まっていただきありがとうございました。これで失礼いたします。……行こう、セアラ」

 エリオットが口早に礼を言い、セアラの手を引いて歩き出す。

「姉さま……」

 心配そうなマイルズの声がしたが、笑ってあげることはできなかった。
 こわばった顔しかできないことも、震えてまっすぐ立てないことも、何もかも恥ずかしくて、顔を上げられなかったのだ。

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