引きこもり令嬢の契約婚約
*
うつむいたまま結構な距離を歩き、連れてこられたのは、ひとつの部屋だった。
小さな肖像画が壁にかけられ、机と、衝立の奥にはベッドもある。
どう見ても誰かの私室だ。
「えっ、ここは……」
「僕の部屋。大丈夫、扉は開けておくから。……邪魔の入らないところに来たかったんだよ」
扉を三十センチほど開けたままにし、エリオットは真面目な顔になる。
促されて椅子に腰かけると、エリオットはセアラの前に跪き、手を握る。
王太子の顔を見下ろすことなど普通はない。セアラは驚きすぎて言葉が出なかった。
「儀式中に、聖獣が祝福することは想定されていない。今回のことは、誰かが君に難癖をつけるために声を上げたのだろうと思う」
「本当ですか? わざわざ言われるなんて、国王様の時はあったのでは……」
年配の重鎮たちは、ルパード王の婚約も婚礼も見てきたはずだ。その彼らに声を上げられれば、やはり心配にはなってしまう。
「違うよ。父上が否定していただろう。結婚式ならともかく、婚約式の時点で祝福などされなくとも問題ない」
握る手の力が、少しだけ強くなる。
かすれたような声の後に、見えたのは、すねたような彼の表情。
「……エリオット様?」
「それともセアラは、この契約を辞めたくなったの?」
(え……。かわ……)
すね顔は、予想以上にかわいらしい。
火が付いたように顔が熱くなる。ドキドキして心臓が暴れ出していた。
「な、な」
「それは……困るよ」
憂いを含んだ表情は妙に色気があって、セアラは直視に耐え兼ね、目をそらした。
見ていては心臓がもたない。
うつむいたまま結構な距離を歩き、連れてこられたのは、ひとつの部屋だった。
小さな肖像画が壁にかけられ、机と、衝立の奥にはベッドもある。
どう見ても誰かの私室だ。
「えっ、ここは……」
「僕の部屋。大丈夫、扉は開けておくから。……邪魔の入らないところに来たかったんだよ」
扉を三十センチほど開けたままにし、エリオットは真面目な顔になる。
促されて椅子に腰かけると、エリオットはセアラの前に跪き、手を握る。
王太子の顔を見下ろすことなど普通はない。セアラは驚きすぎて言葉が出なかった。
「儀式中に、聖獣が祝福することは想定されていない。今回のことは、誰かが君に難癖をつけるために声を上げたのだろうと思う」
「本当ですか? わざわざ言われるなんて、国王様の時はあったのでは……」
年配の重鎮たちは、ルパード王の婚約も婚礼も見てきたはずだ。その彼らに声を上げられれば、やはり心配にはなってしまう。
「違うよ。父上が否定していただろう。結婚式ならともかく、婚約式の時点で祝福などされなくとも問題ない」
握る手の力が、少しだけ強くなる。
かすれたような声の後に、見えたのは、すねたような彼の表情。
「……エリオット様?」
「それともセアラは、この契約を辞めたくなったの?」
(え……。かわ……)
すね顔は、予想以上にかわいらしい。
火が付いたように顔が熱くなる。ドキドキして心臓が暴れ出していた。
「な、な」
「それは……困るよ」
憂いを含んだ表情は妙に色気があって、セアラは直視に耐え兼ね、目をそらした。
見ていては心臓がもたない。