引きこもり令嬢の契約婚約

「そ、そうですよね。婚約者がいなくなったら、また見合いの日々ですもんね。だ、大丈夫です。頑張ります」

 早口でそう告げると、握られた手の力は弱くなる。

「そう……だね」

 今度はエリオットが視線を逸らす。なんだか気まずくなって、セアラは焦るが、何を言ったらいいのかもわからない。ここで逃げの姿勢が強く出てしまった。

「父と弟が待っているので、そろそろ戻りませんか?」
「うーん。ちょっと待って」

 エリオットはセアラの手を離し、そのまま机の方へと向かう。戻ってきたとき、手に何かが握られていた。

「これを君に」

 そのままセアラの背後に回り、ネックレスをつけてくれた。
 細い鎖に、お花をかたどった銀細工、そして中央に小さな宝石がついている。

「婚約者に贈るにはあまりに控えめなデザインだとは思ったんだけど、君はこの方が好きだろうと思って」
「は、はい! とても素敵です」
「普段使いしてもらえると嬉しいな」
「あ、でも私、お返しを何も……」
「お返しは君が笑ってくれればいいよ」
「えっ……」

 思わずきょとんとしてしまう。笑うなんて簡単……と思っていたけれど、心が乱れているとなかなかに難しい。
 セアラはほほを両手で押さえて柔らかくする。うれしいから、最高のお返しをしたい。最高の笑顔を見せたい。
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