引きこもり令嬢の契約婚約
*
エリオットと共に王族の私室がある区画を出ると、父とマイルズがセアラを探して回っていた。
先にマイルズが気づき、エリオットに小さく礼をした後、駆け寄ってくる。
「姉さま、大丈夫?」
「マイルズ。ごめんなさいね。心配をかけて」
「お前は何も悪くないよ。……まったく、あんな儀式の場で声を上げるなんて」
後ろから歩いてきた父も、セアラのことをかばってくれた。
「心配かけてすまないね。シーグローヴ侯爵」
「いえいえ。エリオット様はなにも悪くなどありませんよ」
「そうですよ。……キャンベル公爵もあおっていたよ。みっともないよね。いい大人がさ」
マイルズは深いため息をつく。確かに、冷静に考えると子供みたいな所業だ。
「姉さまは胸張ってなよ。下を向いていると舐められるよ」
「マイルズったら」
セアラが弱気になった時、いつも励ましてくれるのはマイルズだ。
「あっ、殿下、こちらにおられましたか」
エリオットの護衛騎士が、見つけて駆け寄ってくる。
「陛下がお呼びです」
「父上が? ……分かった。じゃあ、見送れなくて悪いけれど。お二方、セアラのことを頼みます」
「はい」
頭を下げ、ローランドと共に立ち去るエリオットの背中を見つめる。
「……ふーん。殿下って姉さまにべた惚れなんだぁ」
「な、なにを言っているのよ。マイルズ」
「だってさ、それ、さっきはつけてなかったよね? エリオット様からもらったんでしょう?」
どうやらネックレスに気づいたらしい。目ざとい弟だ。
「記念にって……くれただけよ」
「姉さまに似合っているよ。よく見てくれているってことじゃないか」
確かに、このネックレスはセアラの身分からしたら簡素な装飾なのだ。普通ならば「こんな簡素なものを」と憤慨してもおかしくない。でも、セアラはこの素朴な感じがとてもうれしかった。
わかる人は分かってくれる。分かってくれない人にどう説明しても、あまり意味はないのかもしれない。
「……落ち込んでいても仕方ないわね」
「そうだぞ。セアラは私の自慢の娘だ」
すでに賽は投げられている。セアラは公式に、エリオットの婚約者になったのだ。
「ありがとう、お父様。帰りましょうか、家に」
仲良く歩き出すシーグローヴ侯爵一家を、キャンベル公爵が見つめているとはつゆとも知らずに。
エリオットと共に王族の私室がある区画を出ると、父とマイルズがセアラを探して回っていた。
先にマイルズが気づき、エリオットに小さく礼をした後、駆け寄ってくる。
「姉さま、大丈夫?」
「マイルズ。ごめんなさいね。心配をかけて」
「お前は何も悪くないよ。……まったく、あんな儀式の場で声を上げるなんて」
後ろから歩いてきた父も、セアラのことをかばってくれた。
「心配かけてすまないね。シーグローヴ侯爵」
「いえいえ。エリオット様はなにも悪くなどありませんよ」
「そうですよ。……キャンベル公爵もあおっていたよ。みっともないよね。いい大人がさ」
マイルズは深いため息をつく。確かに、冷静に考えると子供みたいな所業だ。
「姉さまは胸張ってなよ。下を向いていると舐められるよ」
「マイルズったら」
セアラが弱気になった時、いつも励ましてくれるのはマイルズだ。
「あっ、殿下、こちらにおられましたか」
エリオットの護衛騎士が、見つけて駆け寄ってくる。
「陛下がお呼びです」
「父上が? ……分かった。じゃあ、見送れなくて悪いけれど。お二方、セアラのことを頼みます」
「はい」
頭を下げ、ローランドと共に立ち去るエリオットの背中を見つめる。
「……ふーん。殿下って姉さまにべた惚れなんだぁ」
「な、なにを言っているのよ。マイルズ」
「だってさ、それ、さっきはつけてなかったよね? エリオット様からもらったんでしょう?」
どうやらネックレスに気づいたらしい。目ざとい弟だ。
「記念にって……くれただけよ」
「姉さまに似合っているよ。よく見てくれているってことじゃないか」
確かに、このネックレスはセアラの身分からしたら簡素な装飾なのだ。普通ならば「こんな簡素なものを」と憤慨してもおかしくない。でも、セアラはこの素朴な感じがとてもうれしかった。
わかる人は分かってくれる。分かってくれない人にどう説明しても、あまり意味はないのかもしれない。
「……落ち込んでいても仕方ないわね」
「そうだぞ。セアラは私の自慢の娘だ」
すでに賽は投げられている。セアラは公式に、エリオットの婚約者になったのだ。
「ありがとう、お父様。帰りましょうか、家に」
仲良く歩き出すシーグローヴ侯爵一家を、キャンベル公爵が見つめているとはつゆとも知らずに。