引きこもり令嬢の契約婚約


「エリオット様。縁談の話が進んでいるようですが、よろしかったのですか?」

 ローランドが書類を持って部屋に入ってくる。どうやら、大臣から渡されたお茶会という名の見合いの日程表のようだ。

「見せて」

 受け取って軽く目を通したエリオットは、大きなため息をついた。
 その予定表によると、来週頭から三日間にわたり、執務の合間にお茶の時間が設定されている。公平性を大事に考えているのか、場所は城の奥庭にある東屋、時間もきっかり二時間と一緒だ。家格の高い順となっている。

「つまり僕は、三日間、同じことをしなければならないのだね。まあ、……仕方ないね。まだ結婚なんて早いと思うけど、いつかはしなければならないものだし」

「そうですね。それと、……文化大臣からはこちらが」

「……! 見せて!」

 先ほどとは打って変わった態度で書類を掴んだものの、目を通した彼はあからさまに落胆した。

「どうでしたか?」

「駄目だ。国立美術館設立は予算上無理だと」

 こちらは、エリオットが一週間前に出した提案書への返答だ。
 エリオットは、オズボーン王国での留学経験を活かし、この国に文化施設を作ろうと考えている。しかし、精霊をあがめ自然信仰を尊ぶこの国には、芸術家が育つ素地がない。芸術を志すものは、国を出て他国で名を上げることの方が多いのだ。

「まあ、美術品を集めるのも大変ですからね。ただでさえ著名な作家が少ない中、各貴族が家も持っている美術品は手放さないでしょうし」

「であればこの国の文化に沿った博物館か、精霊に関する記念館でもいい」

 エリオットはずっと、建築美術に魅せられている。中に収蔵するものに負けないほどの美しい建物。しかも、機能も譲るところがないものを建造したい。
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