引きこもり令嬢の契約婚約
「はあ、……はあ」

 心臓が落ち着かない。呼吸も不安定で胸を押さえ、うずくまる。

「お、お嬢様? どうなさいました?」

 アビーの声に顔を上げる。彼女はひどく驚いた様子で、セアラを守るようにしゃがみこむ。

「体調が悪いんですか? なんか顔色悪いですよ」
「だい……じょうぶ。ごめんなさい」
「立てますか? それとも旦那様を呼んできましょうか」
「駄目! やめて」

 駆け出そうとしたアビーに、珍しく鋭い声が出た。彼女は驚いたようにセアラを凝視する。

「……大丈夫だから。お父様には迷惑をかけたくないの」
「では。エリオット様を」
「大丈夫。自力で馬車まで行けるわ」

 気を取り直して立ち上がり、歩き出す。だけど、周囲の視線が気になり、顔を上げられなかった。

(どうしよう。怖くなってきちゃった)

 せっかく外に出て、前を向けるようになってきたのに、自分の行動が他人に与える影響を考えると怖くて足がすくんでしまう。

(こんなんじゃ、エリオット様の傍になんていられないんじゃないかしら)

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