引きこもり令嬢の契約婚約


 お茶会当日、セアラはアビーを連れ、キャンベル公爵家を訪れた。
 ソフィアに教えてもらったチョコレートも、もちろん持参している。

(これなら失敗しないわ!)

 意気込んでみたものの、不安は尽きない。やはり社交には苦手意識があるし、相手がアデライドだからなおさら憂鬱だ。
 葉擦れの音が聞こえ、セアラは軽く空を見上げる。シロフクロウの姿が見えたような気がするが、瞬きをするうちに見えなくなってしまった。

(ホワイティ様……なわけないか)

 玄関にたどり着く前に、キャンベル家の執事が扉を開ける。

「お待ちしておりました。シーグローヴ侯爵令嬢さま」
「お招きありがとうございます」
「ご案内いたします。こちらへどうぞ」

 礼儀の行き届いた使用人に、絢爛豪華な室内。何度来ても、キャンベル公爵家のホールには圧倒されてしまう。

「ようこそ。セアラ様」

 今日のアドレイドは、華々しい赤いドレスだ。

「ごきげんよう、アドレイド様。本日はお招きありがとうございます」
「ええ。私も待ちかねていたわ。何度お誘いしても、セアラ様ってば欠席のお返事ばかりなのだもの」
「申し訳ありません。この通り不出来なもので、正妃教育で手一杯になっていたのです」

 和やかに会話を続けていたつもりだが、アドレイドの表情に若干の険が寄る。

「そうね。自覚はあるのね」

 小声だったがはっきり聞こえた。セアラはなんと返していいかわからず、苦笑する。

「どうぞ、座って?」

 日当たりのいい客間に、色とりどりの花が飾られている。セアラが心の中で花の名前を思い出しているうちに、メイドがお茶を入れてくれた。

「ハーブティですね。いい香り」
「ええ。この日の為に取り寄せたのよ」

(おいしい……けど、めずらしい味ね。なにかしら。いろいろブレンドされているみたいだけど。ローズマリーがベースで、オレンジ系のハーブが混ざっているのかしら……)
 セアラは、ハーブには詳しい方だが、特定まではできなかった。
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