引きこもり令嬢の契約婚約
*
エリオットから婚約破棄された翌日、セアラは屋敷の庭で、土いじりをしていた。
昨晩、遅くに帰ってきた父は、訳知り顔でセアラの許へとやってきた。
「殿下から大体聞いた。しばらくは屋敷にいなさい。王都を離れたいというなら、領地へ行ってもいい」
その申し出は正直ありがたかった。やがて婚約破棄が正式に発表されれば、王都には噂が駆け巡るだろう。その渦中にいるのは、精神的によくない。
セアラが頷くと、父は数日のうちに手配すると言ってくれた。
朝になって事情を聞いたらしいマイルズは、不満顔でセアラを見ていたが、話をする前に父に急かされ、学校へ向かっていった。
(マイルズ、怒っているのかしら……)
気弱な姉に対して、言いたいこともあるのだろう。セアラも自分が情けない。
「……はあ」
もう何度目かわからないため息がこぼれる。
「あら、ここにもモグラ塚……」
小さな穴に土をかけ、ポンポンと振動が伝わるくらいに強く叩く。大事なハーブたちを傷つけないでほしいと願いを込めて。
草花が風に揺れ、土のにおいがふわりと巻き上がる。
(今後は、ずっと領地で暮らすのもいいかもしれないわ。こんなささやかな日常が、私は一番好きなんだもの……)
そう思いながらも、瞼を閉じれば悲しそうなエリオットの顔が浮かんでくる。
(あんな顔させてしまうなんて……)
エリオットに婚約を破棄したいと言えば、契約を守らないことを怒られるか、笑って許してくれるかのどちらかだと思っていた。
(泣きそうな顔で告白しながら許してくれるなんて……思わないじゃない)
セアラが欲しいのなら、手に入れるだけの権力が、エリオットにはある。
でも彼はそれを使わず、セアラの気持ちを汲んで、婚約破棄を了承してくれた。
(……私は? それに甘えているだけ? エリオット様のあんな顔は見たくないのに。……ああ駄目。考えれば考えるほど自分が情けなくなる)
エリオットから婚約破棄された翌日、セアラは屋敷の庭で、土いじりをしていた。
昨晩、遅くに帰ってきた父は、訳知り顔でセアラの許へとやってきた。
「殿下から大体聞いた。しばらくは屋敷にいなさい。王都を離れたいというなら、領地へ行ってもいい」
その申し出は正直ありがたかった。やがて婚約破棄が正式に発表されれば、王都には噂が駆け巡るだろう。その渦中にいるのは、精神的によくない。
セアラが頷くと、父は数日のうちに手配すると言ってくれた。
朝になって事情を聞いたらしいマイルズは、不満顔でセアラを見ていたが、話をする前に父に急かされ、学校へ向かっていった。
(マイルズ、怒っているのかしら……)
気弱な姉に対して、言いたいこともあるのだろう。セアラも自分が情けない。
「……はあ」
もう何度目かわからないため息がこぼれる。
「あら、ここにもモグラ塚……」
小さな穴に土をかけ、ポンポンと振動が伝わるくらいに強く叩く。大事なハーブたちを傷つけないでほしいと願いを込めて。
草花が風に揺れ、土のにおいがふわりと巻き上がる。
(今後は、ずっと領地で暮らすのもいいかもしれないわ。こんなささやかな日常が、私は一番好きなんだもの……)
そう思いながらも、瞼を閉じれば悲しそうなエリオットの顔が浮かんでくる。
(あんな顔させてしまうなんて……)
エリオットに婚約を破棄したいと言えば、契約を守らないことを怒られるか、笑って許してくれるかのどちらかだと思っていた。
(泣きそうな顔で告白しながら許してくれるなんて……思わないじゃない)
セアラが欲しいのなら、手に入れるだけの権力が、エリオットにはある。
でも彼はそれを使わず、セアラの気持ちを汲んで、婚約破棄を了承してくれた。
(……私は? それに甘えているだけ? エリオット様のあんな顔は見たくないのに。……ああ駄目。考えれば考えるほど自分が情けなくなる)