スパダリ御曹司は政略妻とベビーに一途愛を証明する

1章:完璧なパパ


 四月八日、午後八時半――。

「ただいま」

 玄関から響いた声に、張りつめていた心の糸がふっと緩む。
 すぐにリビングの扉が開き、朔也さんの姿が見えるともっとだ。

「おかえりなさいっ」
「パパぁ~!」

 さっきまで大泣きしていた息子の朔太郎が顔をぱっと輝かせる。
 朔也さんはいつものように優しい眼差しで、真っ先に朔太郎に目を向けて笑った。

「朔太郎、泣いていたのか?」
「さっき、お風呂が嫌で逃げようとして転んじゃって。でもケガはなさそうです」

 まだうまく話せない朔太郎の代わりに私が答えた。
 その答えに朔也さんは微笑む。

「そうか。元気な証拠だな。おいで、朔太郎」

 朔也さんは朔太郎に向かって腕を広げた。すぐに朔太郎が彼の精いっぱいの速さで走っていって、大きな腕の中に飛び込む。朔也さんはそんな朔太郎を軽々と抱き上げた。

 一歳四か月になった朔太郎は、びっくりするほどのパパっ子だ。
 そして朔也さんの方も、朔太郎を溺愛している。
 彼の顔が朔太郎を見て優しく綻ぶとき、つい私も笑顔になった。

「ほら、この前貼った星のシール。朔太郎、タッチできる?」

 それは数日前、朔太郎が朔也さんに高く抱き上げられて天井に貼ったもの。
 朔也さんの声に促されて、朔太郎が「ん~!」と声をあげながら腕を伸ばす。
 指先がシールに触れた瞬間、うれしそうな笑い声が響いた。

「あぁ、朔太郎はどんどん大きくなってるな。よし、そろそろ一緒にお風呂に入ろう。お風呂でなにしようか?」
「じゃー!」

 さっきまでのお風呂イヤイヤが嘘のようだ。
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