スパダリ御曹司は政略妻とベビーに一途愛を証明する
 朔也さんは目を細めた。

「でも、ディカフェではないコーヒーも、こうした紅茶も口にできるようになった。悪い面ばかりでもないさ。あ、考えてみたら、お酒って一緒に飲んだことはないな」
「そういえばそうですね。でも、そもそも私、お酒は嫌いじゃないんですけど、弱いんです。すぐ眠くなっちゃって」
「へぇ……今度一緒に飲もうか」
「だから眠くなっちゃうんですってば」
「いつも寝ているときも気を張っているだろう? 少しぐらいぐっすり眠れる日があってもいいじゃないか」

 朔也さんはあたり前のようにそう言って微笑んだ。

「それは朔也さんも同じじゃないですか」
「俺の場合は、もともとショートスリーパーなんだ。……あぁ、そろそろいいな。どうぞ」

 差し出されたカップには、琥珀色の紅茶。
 手に取った瞬間、ぬくもりが手から全身に行きわたった。

「ありがとうございます。これ、この前選んでくれたやつですよね」
「あぁ、香りがいいから七海も好きかなと思って」

 そう言って、朔也さんは私の隣に腰を下ろした。
 いつも通り、ひとり分、間を開けて。

 なんとなく朔太郎がいないときも、朔太郎が私たちの間にいるような気がする。
 だから、ふたりでいても母親と父親でいられるのかもしれない。

 紅茶を口に含むと、まろやかさと甘い香りが広がった。
 思わず笑みがこぼれる。

「おいしいです。いい香りで、すごく温まる」
「よかった。俺も、この香りは好きだな」

 笑い合ってうなずいたらもうひと口。
 そうしているうちに、いつの間にかふわふわと意識が緩んでいた。
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