完璧御曹司の執愛から逃げ、推しのアイドルと結ばれる方法

12.婚約者の正体

私は促されるように座布団に座った。
 正座をするが、座布団が薄っぺらくて足が痛い。
 
 草井奈美子がグラスに水道水を注いで私に出してくる。
(「身分が違うだろ」)
 祖父の言葉が私の脳裏に蘇った。
 私にも驕り高ぶったところがあった。
 
 恐る恐るグラスの水に口をつけると思いの外飲みやすかった。

「凄い! 美味しい! 東京の水道局って優秀なのね。感動したわ」
 私の言葉にクスクスと草井奈美子が笑う。

「本当に凛音ちゃんて面白い子ね。事務所では意地悪をしてしまってごめんね」
「意地悪? 何のこと?」
 私は彼女に意地悪をされた記憶がなく首を傾げた。

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