完璧御曹司の執愛から逃げ、推しのアイドルと結ばれる方法
 母が困ったような顔で私を見つめてくる。
「凛音、今日から一人暮らしを体験してみたいって? 僕が新居まで送るよ」
 涼やかに微笑む玲さんに私は戸惑いを隠せない。

「玲さん、私は玲さんから逃げたくて、この家を出ようとしてるんだよ。玲さんが婚約を破棄してくれるまでは、もう会いたくない」
 彼に対する恐れがあるが、ここは私の自宅だから突然殺されるような事はないだろう。

 私の言葉に玲さんは一筋の涙を流した。
 その姿に一瞬心臓が止まりそうになる。
 彼の涙を見るのは初めてのはずなのに、なぜか既視感を感じた。

 私が何も言わずに彼を見つめていると、急に玲さんが膝をついた。
< 167 / 320 >

この作品をシェア

pagetop