完璧御曹司の執愛から逃げ、推しのアイドルと結ばれる方法
 扉を閉め空間に私と兄しかいなくなった途端、私は気がつけば兄に抱きついていた。

「お兄様、どうして今更戻って来たの? 私、玲さんに酷い目に遭わされたんだよ⋯⋯」

 兄はそんな私を思いっきり抱きしめ返す。
 骨が折れそうなくらいの痛みと熱い温もりに涙が溢れた。

「凛音、今、曽根崎玲への恐怖心があるということは、殺された記憶があるのか?」
 私は頭の上から聞こえた兄の思わぬ言葉に思わず顔を上げた。
 そこには真剣な目で私を見下ろす兄の姿があった。繰り返す時間の記憶があるのは私だけではなかったようだ。
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