完璧御曹司の執愛から逃げ、推しのアイドルと結ばれる方法
 私が笑顔で頷くと、祖父は嬉しそうにしていた。
 私が願えば玲さんとの婚約も解消してくれるだろうと鷹を括っていた。
 
 革張りの黒い応接ソファーに座ると、秘書の方が冷たいルイボスティーを出してくれる。口をつけると苦味の中にほのかな甘さが口に広がった。どうやら相当喉が乾いていたようだ。私は落ち着いて、婚約解消の話を切り出すことができた。


「お爺ちゃま、久しぶり! 今日は曽根崎玲さんとの婚約を解消して欲しくて来たの!」
 私の言葉が余程予想外だったのか、祖父は首を傾けた。
 そして、秘書に何かを耳打ちして下がらせる。
 私がまた我儘を言うと思って身内の恥を周囲に晒さない予防策だろう。

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