敏腕自衛官パイロットの揺るがぬ愛が強すぎる~偽装婚約したはずが、最愛妻になりました~
「だけど私はべつに出会いなんて……」
「求めてないって?」
引きずられるようにして歩きながら、うんうんと頷く。
「悠長に構えていたら、あっという間におばあちゃんになっちゃうんだから。〝命短し、恋せよ乙女〟ってよく言うでしょう? せっかくの二十七歳がもったいない。せっかく綺麗にしてきたのに、その姿を披露しないでどうするの。まぁ、彩羽はもともと美人だけど」
いったん立ち止まったゆかりが、ひと筋乱れた彩羽の髪を直してくれたため「ありがとう」とお礼を言う。ゆかりは「うん、これでよし。かわいい」とひとり納得して、再び歩きはじめた。
人が思うほど命が長くないのは彩羽もわかっている。事実、ついこの前、高校生活を送っていた――いや、中学生だって数年前の感覚だ――のに気づけば二十七歳なのだから。中身はそれほど変わっていないのに、すっかりいい大人だ。
かといって恋をしようという気持ちに繋がるかといったら、そうではない。この二年間味わった、おひとり様の気楽さはなかなか快適なのだ。彼氏の言動に心を揺らさずに済むのがなによりだろう。心身ともに平穏でいられる。――たまに寂しいと感じるときはあるにせよ。
「それに今日は私たち憧れの自衛官たちがたーくさん集まるんだから!」
憧れているのはゆかりだけでしょう?と言いたいのをぐっと堪える。ゆかりは高校生のときから自衛官推しだ。
今日は、お相手を彼らに限定した婚活パーティーが開かれる。ひとりでは心許ないから一緒に参加してほしいと懇願され、彩羽は会場となるホテルまでやって来た。
地方都市の仙台で高級と位置づけられるそのホテルは、エレガントな雰囲気が人気のホテルである。
「私の一番の推し、航空自衛官がきっとたくさん来るはずよ」
まだ見ぬ彼らの顔を思い浮かべ、ゆかりが恍惚とした表情を浮かべる。
「彩羽の大好きな空にブルーインパルスを飛ばす精鋭部隊も来るかも! っていうか来ていてほしい! 真っ青な空とブルーインパルス、いい画でしょう? ほら彩羽も、だんだん楽しみになってきたんじゃない?」
「求めてないって?」
引きずられるようにして歩きながら、うんうんと頷く。
「悠長に構えていたら、あっという間におばあちゃんになっちゃうんだから。〝命短し、恋せよ乙女〟ってよく言うでしょう? せっかくの二十七歳がもったいない。せっかく綺麗にしてきたのに、その姿を披露しないでどうするの。まぁ、彩羽はもともと美人だけど」
いったん立ち止まったゆかりが、ひと筋乱れた彩羽の髪を直してくれたため「ありがとう」とお礼を言う。ゆかりは「うん、これでよし。かわいい」とひとり納得して、再び歩きはじめた。
人が思うほど命が長くないのは彩羽もわかっている。事実、ついこの前、高校生活を送っていた――いや、中学生だって数年前の感覚だ――のに気づけば二十七歳なのだから。中身はそれほど変わっていないのに、すっかりいい大人だ。
かといって恋をしようという気持ちに繋がるかといったら、そうではない。この二年間味わった、おひとり様の気楽さはなかなか快適なのだ。彼氏の言動に心を揺らさずに済むのがなによりだろう。心身ともに平穏でいられる。――たまに寂しいと感じるときはあるにせよ。
「それに今日は私たち憧れの自衛官たちがたーくさん集まるんだから!」
憧れているのはゆかりだけでしょう?と言いたいのをぐっと堪える。ゆかりは高校生のときから自衛官推しだ。
今日は、お相手を彼らに限定した婚活パーティーが開かれる。ひとりでは心許ないから一緒に参加してほしいと懇願され、彩羽は会場となるホテルまでやって来た。
地方都市の仙台で高級と位置づけられるそのホテルは、エレガントな雰囲気が人気のホテルである。
「私の一番の推し、航空自衛官がきっとたくさん来るはずよ」
まだ見ぬ彼らの顔を思い浮かべ、ゆかりが恍惚とした表情を浮かべる。
「彩羽の大好きな空にブルーインパルスを飛ばす精鋭部隊も来るかも! っていうか来ていてほしい! 真っ青な空とブルーインパルス、いい画でしょう? ほら彩羽も、だんだん楽しみになってきたんじゃない?」