敏腕自衛官パイロットの揺るがぬ愛が強すぎる~偽装婚約したはずが、最愛妻になりました~
 透矢が彩羽を連れ立ったのは、ホテルから十分ほど歩いたところにあるレストランだった。白い壁に真っ青なドアが目を引く、かわいらしい外観だ。

 (青空と白い雲みたいな組み合わせね)

 たったそれだけなのに、好きな色の取り合わせだと気分が弾む。
 透矢に誘われて入った店内も外観同様、白いテーブルに青い椅子のカラーリングがとても爽やか。店員に案内されて窓際のテーブルに彼と向かい合って座った。
 時刻は十二時半まで間もなく。ランチタイムのせいか、それとも人気店なのか、彩羽たちが案内されると満席になり、順番待ちの列が数組できた。
 十一時にスタートした婚活パーティーには一時間程度しかいなかったらしい。そのわずかな時間で成立するカップルは珍しいのか、受付のスタッフも『もうよろしいんですか?』と確認したくらいだ。
 透矢がメニューを広げて彩羽に差し出す。


 「ありがとうございます。おすすめはなんですか?」


 色鮮やかな料理がたくさんあり目が迷う。


 「ここはどれもおいしいから迷うね。一品料理をいろいろ注文してシェアしようか」
 「そうですね。そうしていただけるとうれしいです」
 「じゃあ決まり」


 透矢が注文を済ませ、ほどなくして運ばれてきたフルーツサイダーで喉を潤す。ざく切りのオレンジやリンゴ、キウイフルーツがたっぷり入り、目にも爽やか。これも透矢推薦だ。


 「おいしい……!」


 ほどよい酸味と炭酸が、外を歩いて火照った体を冷ましていく。


 「だろう」


 透矢がうれしそうに笑う。


 「三井さんは」
 「透矢でいいよ。俺もさっきから彩羽さんと呼んでる」


 言われてみればそうだったかもしれない。今日は〝カップル〟だし、それもいいだろう。


 「では遠慮なく。透矢さんはこの店によく来るんですか?」
 「この辺に来るときにはね。おいしい店があると聞くと行かずにはいられない」
 「わかります。ネットのおすすめレストランとかカフェ情報のチェックは欠かせません」
 「気が合うね」


 透矢がグラスを持ち上げ彩羽に突き出す。

 (……乾杯? かな?)

 迷いつつ同じようにすると、透矢は軽くグラスを合わせた。気の合う仲間に乾杯といったところか。
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