【1話だけ】皇子妃は空気が読めるはずなのに、なぜか夫の気持ちだけはわからない
海に囲まれたシンナ王国。
小さな島国ながら、領土は豊かな自然に恵まれている。
時にはその脅威にさらされることもあるが、それ以上の恩恵を享受し、国民は敬愛する国王のもとで平和に暮らしている。
つねにどこかで争いの起きている大陸とは、地理的に隔離されていることも大きい。
シンナ国王を始めとする王族たちは、朱塗りの王宮に住んでいる。
その造りは荘厳で、神殿のようでもある。
ナツメはその王宮という場所で、だらしなく寝そべっていた。
その顔も、第二王女という立場に似つかわしくないほど、締まりなくニヤけながら。
「今日もかわい子ちゃんですねえ」
そう言って、ナツメと同じように脱力しまくって寝転がっている白猫を撫で回す。
ところが、猫が素早く顔を上げ、耳をピン! と立てた。
その方角から足音が近づいてきていたのだった。
ナツメも上体だけ起こす。
「ナツメはいるかしら?」
「なんだ、エンジュお姉様かあ」
ナツメは再び床に突っ伏した。
「まだ昼前だっていうのに、だらしないわねえ。お父様が呼んでるわよ」
「えー、それって急ぎ?」
「ダラダラしてるだけなんだから、今すぐ行きなさい。いい? 私は今から出かけるけど、きちんと行くのよ?」
「お姉様はどこに?」
エンジュ第一王女は、またか……とでも言いたげに、天井を仰いだ。
「東部の広い範囲で作物が育成不良になってるって話があったでしょう?」
「あっ、ああ、あれね」
「全くもう!」
小さな島国ながら、領土は豊かな自然に恵まれている。
時にはその脅威にさらされることもあるが、それ以上の恩恵を享受し、国民は敬愛する国王のもとで平和に暮らしている。
つねにどこかで争いの起きている大陸とは、地理的に隔離されていることも大きい。
シンナ国王を始めとする王族たちは、朱塗りの王宮に住んでいる。
その造りは荘厳で、神殿のようでもある。
ナツメはその王宮という場所で、だらしなく寝そべっていた。
その顔も、第二王女という立場に似つかわしくないほど、締まりなくニヤけながら。
「今日もかわい子ちゃんですねえ」
そう言って、ナツメと同じように脱力しまくって寝転がっている白猫を撫で回す。
ところが、猫が素早く顔を上げ、耳をピン! と立てた。
その方角から足音が近づいてきていたのだった。
ナツメも上体だけ起こす。
「ナツメはいるかしら?」
「なんだ、エンジュお姉様かあ」
ナツメは再び床に突っ伏した。
「まだ昼前だっていうのに、だらしないわねえ。お父様が呼んでるわよ」
「えー、それって急ぎ?」
「ダラダラしてるだけなんだから、今すぐ行きなさい。いい? 私は今から出かけるけど、きちんと行くのよ?」
「お姉様はどこに?」
エンジュ第一王女は、またか……とでも言いたげに、天井を仰いだ。
「東部の広い範囲で作物が育成不良になってるって話があったでしょう?」
「あっ、ああ、あれね」
「全くもう!」
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