真夜中の償い
裕司が退所すると由里が一番年長になり、シスターマザーを手伝って子供たちの世話や勉強を見たり忙しく働いた。

裕司と携帯でラインをしたり繋がっていることで、由里は安心できた。

そして由里は奨学金で国立大学を目指すことを決めた。

施設で子供たちの世話や手伝いを終えると、毎日深夜を過ぎるまで勉強した。

そうして倒れ込むように眠った。

そうすることで夢も見ず朝まで寝られるようになったが、それでも悪夢は時々やって来た。

学校でも休み時間もお昼も一人参考書を読み漁った。

その参考書も古本屋で買ったものだ。

由里は記憶力が抜群に良かった。

本でもなんでも写真のように見たものを記憶できるのだ。

小学校から高校まで成績はずっと1番を取り続けていた。

院長先生やシスターマザーも応援してくれて一番奨学金制度が有利な大学を調べてくれた。

高校2年生になると進路指導も始まる。

担任の先生も進路指導の先生も由里なら最高府の大学でも合格すると言ってくれた。

でも返済の必要がない奨学金制度や金額などを考えても、私立大学のほうが充実していることが分かった。

国立大学は授業料は安いのだが、奨学金が充実していない。

結局由里は目標を横浜にキャンバスのある私立大学に変更した。

奨学金で通える大学、そして生活面も給付金が出る大学に絞った。

特待生としての試験にパスすれば奨学金の返済もいらない。

由里は特待生としての試験にも満点で合格した。

そして大学に行くことができるようになった。

大学でも4年間首席を通した。

家庭教師やカフェのバイトをしながら生活費も稼いでいた。

裕司はそんな由里に触発されて働きながら勉強を始め、2年間で由里のいる大学に奨学金を受けて合格した。

二人は2年間今度は由里が2年先輩として学生生活を送った。

リアムは由里の話を聞き二人の絆を感じて、2人の過去にどうしようもない嫉妬を感じてしまった。

でも由里が裕司とは家族愛で兄以外の何物でもないと言って笑った。

そんな過去があり由里は男性とうまく付き合えなかったという。

セックスもきっと最後の最後で拒否してしまいそうだと感じていたらしい。

はじめてリアムのペントハウスで抱かれたことが夢のようだと言ってはにかんだ。

自分も人並みに恋愛ができそうだと思ってうれしかったけれど、一緒に寝ていれば悪夢にうなされることもある。

その原因となる過去をリアムに話さなければならないとう覚悟が持てなくて、この前は夜中に帰ってしまったのだと言った。

でも、いつまでも黙ってはいられない。

裕司にも今日説得されたらしい。

彼のサムズアップの意味が理解できた。
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