万能フライパンで王子の胃袋を掴んだ私、求婚を断って無双する!
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黒地エリカが目覚めたとき、周囲は闇に包まれていた。
上下左右の感覚もなく、ただまっ黒な闇があるのみだ。
「なによこれ」
きょろきょろと見回したとき、正面にぽうっと光が現れた。
現れたのは、金髪の美丈夫。浅黒い肌は筋肉質で、瞳は髪と同じ金色。ギリシャ神話に出てきそうな衣装を身に纏い、黄金の冠をかぶり、黄金の杖を持っていた。
光に包まれた彼は神々しいが、どこか禍々しさも感じられた。きらめく瞳にも優し気な笑顔にも、邪気が漂う。
「目覚めたか、黒地エリカ」
男性の声は低く、心地いい響きを持っていた。
「ここどこ? あなた誰?」
イケメンだから、エリカは言葉を丁寧にした。
「お前たちがいうところの異世界で、私はドナート。神だ。お前は死んでここに来た」
「嘘!」
叫ぶと同時に記憶が蘇る。
自分は日本で会社員をしていて、後輩には厳格に指導した。
おどおどしている女には人前で緊張しない訓練として早朝の玄関に一時間ほど立たせ、街行く人に大声で挨拶するように指導してやった。ミスをした人には「これくらいもできないの」「幼稚園からやりなおしたら」などと親切なアドバイスを続けた。