万能フライパンで王子の胃袋を掴んだ私、求婚を断って無双する!
「どうしてだ!?」
「あんたたち、フライパンすら持てないの?」
 からかうように言って、女がそれを手にする。が、やはり持ち上がらない。
 美愛は首をかしげながらフライパンを持ち上げる。通常のフライパンより軽いくらいなのに、どうして彼らは持てないのだろう。もしかして、自分以外は持てない仕様なのだろうか。

「たぶんこれ、特殊なんで……」
「お前が特殊なんじゃないのか」
 男のひとりが言い、ある意味で正解だ、と思う。
 清水でフライパンをゆすいでからかまどに乗せると、ちょうどいい感じで収まった。

「なにを焼くんですか?」
「肉と野菜だ」
 言われた通りに肉と野菜を炒めて、それらを皿に盛り付ける。バーベキューの変化形みたいな感じだな、と思った。

「ありがとう、これでやっとご飯をいただけるわ。よかったら一緒にいかが?」
 老婦人がにこにこと告げる。
 言われて、思い出した。自分は腹ペコで電車に乗って、そのまま転生騒ぎになったのでなにも食べていない。

「ご相伴(しょうばん)にあずかります」
 答えると、男性が折り畳みの椅子を移動させて老婦人たちのテーブルの前に置いた。
 美愛は遠慮なく座らせてもらい、食事をいただいた。お酒は弱いので、ワインは遠慮して水を飲む。

「おいしい!」
 肉を焼いただけなのに、極上のステーキのようだ。脂がとろっとしていてやわらかく噛み切り易い。塩コショウも適当だったのに塩味が甘く感じられ、コショウがピリッときいている。
 野菜のくさみはあちらよりきついかと思ったらそうでもなく、現代日本と同じくらいにおいしい。
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