万能フライパンで王子の胃袋を掴んだ私、求婚を断って無双する!
「外で食べるせいか、いつもよりうまいな」
 男性がにこにこしていて、隣のテーブルで食べている使用人たちからもおいしいの声がこぼれている。

「あなたのおかげかしらね。名乗るが遅れたわね。私はカーラ・デ・フェルギーニ。こちらは夫のフィエロよ」
 女性の紹介で、フィエロが軽く手を上げる。
「天白美愛です。こっちふうだと、ミア・テシロ、かもです」
「ミア・テシロ。いいお名前ね」
 老婦人は品よく笑みを浮かべる。

「せっかくピクニックに来たのに、フライパンを忘れてどうしようかと思ってましたのよ」
「お弁当じゃなくて現地でごはんを作るピクニックなんて初めて聞きました」
 言ってから、バーベキューなら現地で作るなあと思い直す。

「そんなに珍しいかしら?」
「すみません、こちらに来たばかりで物を知らなくて」
「外国からいらしたの? おひとりで?」
「そんな感じです」
 転生と言って通じるのかわからないので、肯定しておいた。

「大変だったでしょう」
「この先どうしたらいいのか途方にくれています」
 この世界の常識もわからないし、と思ったところで頭の中に国の名前やら通貨やらがぶわっと浮かんでは消えた。
 どうやら、基礎知識は頭に入っているらしい。
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