万能フライパンで王子の胃袋を掴んだ私、求婚を断って無双する!



「いよいよ明日ですね。緊張します」
 三時のお茶の席で、ミアは言った。
 貴族は使用人とお茶をすることはないが、カーラはおおらかで、さみしいからといってミアかデルフィーナを同席させることが多かった。今日はふたりともが同席している。

「ごめんなさいね。急にピクニックでの食事を頼んでしまって」
 カーラに謝られ、ミアは首をふる。

「食の細い方なんですよね」
「まだお小さくていらっしゃるのだけど、小食で。環境を変えたら食欲がわくのではと、うちの森に行くことになったの。主人がミアを凄腕料理人だと自慢したのも耳にされたみたいで」

「ハードル、激上がり……」
 ミアが眉間に皺を寄せると、ディルフィーナがくすくすと笑った。

「ここは治安がいいから選ばれたんでしょうね」
 王都にほど近いフェルギーニ領は、小さいが自然が豊かで治安もいいという。
 だから見知らぬ自分からフライパンを借りるのも平気だったのだ、とも言われた。
 翌日は早朝から慌ただしかった。通いの使用人と一緒に準備をして、午前中にフライパンを持って使用人だけで荷馬車で先行し、用意する。

 十二時近くになると、見慣れない豪華な馬車がやってきた。客が乗ってきた馬車で来ると言っていたから、これだろう。
 火の番をしている人を除き、ミアたちは並んで馬車の到着を待つ。数騎の騎馬が護衛のように(はべ)っていた。
 馬車は足音も高く彼女たちの前で止まり、ぶるる、と馬が鼻をならした。

 磨き上げられた赤茶の車体は滑らかにつややか。車輪もキャビンも大きい。(つる)を模した金色の装飾が施され、高い御者台には赤いベルベットに金糸の装飾があった。
 馬車の後ろに立っていた人物が降りて来て、馬車の扉を開ける。
 先に降りたのはフェルギーニ夫妻だった。降りたふたりは振り返って客の降車を待つ。
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