転生聖女は、ユニコーンと逃げ出した
1・前世持ちの無能聖女が、ユニコーンと逃げた先
「無能聖女、シエル・べサリオ。そなたには、こちらが決めた男性と結婚してもらう」

 ――ある昼下がり。
 20歳の誕生日を向かえるまで聖なる力を発現できなかった結果、神殿内で白い目で見られて虐げられていた私は、顔と名前を知らない男性との結婚を司祭から強要された。

「聖女は純潔を重んじるものでは、ないのですか?」

 いくら聖女の高貴なる血を後世に残すためだと説明されても、会ったことのない人間と夫婦になるなど冗談ではなかった。
 そう怒り狂いたい気持ちをぐっと堪え、聖女らしく口元を綻ばせて静かに問いかけた。

「そんなものを信じていたのか。迷信に決まっておるだろう」

 聖母マリアのような微笑みを見慣れているせいか、司祭は私の言葉に聞く耳を持ってはくれなかった。
 うんざりとした様子で眉を吊り上げた男は、聖女のしきたりを語る。

「成人を迎えた聖女は、貴族に嫁ぐ決まりだ。従えないのであれば、ここで死ぬしかない」

 究極の二択を迫られた私は、その選択を脳裏に思い浮かべる。
 好きでもない男の元へ嫁ぐか、今すぐここで命を落とすか。
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