転生聖女は、ユニコーンと逃げ出した
 ――死んだら、それで終わりだ。
 生きていれば、いつかはいい事が訪れるかもしれない。

 一縷の望みをかけて、歴代の聖女たちは司祭の思い通りに結婚を了承したのだろう。
 しかし、自分はそんなふうには思えなかった。

 ――それは生き地獄に身を置いたことのない偽善者の世迷言だ。
 その言葉を信じて藁にも縋る思いで命を繋いだところで、なんの意味もないと身を持って実感しているからだ。

 私には佐部志江留(さべしえる)として生きた前世の記憶があった。
 妹の乃絵留(のえる)にすべてを奪われ、死んだほうがマシだと思えるような日常を25年間歩み続けた。
 その最期は、あっけない。
 彼女から逃れるために歩道に飛び出し、トラックに轢かれて命を落としたはずだったのに――なぜか私はこうして、生きている。
 べサリオ公爵家の聖女シエルとして。
 一度は終わったはずの人生が、別人に生まれ変わって始まったのだ。
 今度こそ幸せになれたらいいのにと、思ったのもつかの間。

 ――神様は転生しても、薔薇色の人生を授けてはくださらなかった。
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