転生聖女は、ユニコーンと逃げ出した
 ディルクさんは決意を秘めた瞳をこちらへ向けながら、私の手を強く握りしめた。
 その指先から伝わる熱が、彼の言葉が本心だと訴えかけている。
 ディルクさんはどうして私よりも魅力的なあの子に見向きもせず、自分を守ろうとしてくれるの……?

 この人のことは、よくわからない。
 ノエルよりも私を選んでくれたのが嬉しいはずなのに、一度酷い裏切りを受けたと感じているせいか。
 得体のしれないディルクさんの行動が、別の意味で私の心を蝕んでいる。

「どうしてあの子ではなく、私を選ぶのですか……」

 己の指先に触れたこの手を振り払うことなくこのまま彼と未来を見据えて歩んでも、本当にいいのだろうか……?
 私はどうしても自分だけでは答えを見出せず、ディルクさんにお伺いを立てた。

「胸の奥底から湧き上がるこの想いに、名前をつけるのは難しい」

 納得できるような理由がなければ、彼の手を取ることはできない。
 そう遠回しに断ったつもりだが、ディルクさんには伝わらなかった。
 自身の命を賭ける価値もない存在だと知られたら、捨てられて傷つくのは私のほうなのに、そんなふわふわとした理由で求められても困ってしまう。
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