転生聖女は、ユニコーンと逃げ出した
 望めばなんでも叶えてもらえた妹。
 望みを口にしたところで、聞く耳すら持ってもらえなかった姉の私。
 前世では、言葉にしたところで無駄だと、諦めていた。

 ――しかし……。

 ノエルではなく私を選んでくれた、ディルクさんになら。
 きっと、あの時言い出せなかった願いを口にできると思うから。

「私を見て。嫌わないで。虐げないで。つらいのも、苦しいのも。もう、嫌なんです……」

 後悔だけはしたくない。
 そう考えた私は、欲張ってしまった。

 彼がどう感じるかはわからない。
 だからこそ――できるだけ簡潔に、前世で誰にも叶えてもらえなかった願いを羅列したつもりだ。

 ――私の心が清らかではなく醜いと知ったディルクさんに、嫌われてしまったらどうしよう。

『君のような女性を選んだのが、間違いだった』

 そう言って、私の前からいなくなってしまったら……。
 きっと、もう二度と立ち直れない。
 そう強く、感じていたからこそ――私はディルクさんの返答を聞くまで、彼の表情を見られなかった。

「わかった。君の願いを叶えるため、全力を尽くそう」
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