転生聖女は、ユニコーンと逃げ出した
 絵を描いている間は、つらいことも苦しいことも、忘れられる。
 自分にはこれしかないと思っていた私にとって、ディルクさんの危惧はあながち間違っていなかった。

 唯一無二の趣味を奪われたら。
 何者でもなくなった私は、どうやって生きていけばいいのかすらもわからなくなってしまうから……。

「描いた絵が誰かを傷つけてしまうかもと、恐れなくていい。俺たちはシエルに悪気はないと、わかっている」

 ――だからこそ。
 彼の言葉は、瞳から大粒の涙を流すほどに嬉しかった。

 やっと、私を見て。
 やっと、私だけを愛して。
 やっと、優しい言葉をかけてくれる人が現れたのだ。

「俺はこれから、君が負の感情を支配された絵ではなく、喜びの感情で満たされながら絵画を描けるように、尽力する」

 ――私はもう、1人じゃない。
 差し伸べられたこの手は、何があっても――手放してはいけないと強く感じた。

「もし君が俺に、してほしいことがあるのなら――教えてほしい」

 私なんかを好きになってくれる人はディルクさん以外、現れるはずがないのだから……。

「私、は……」
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