転生聖女は、ユニコーンと逃げ出した
8・つかの間の休息
 司祭と話をつけたお陰で、もうお尋ね者として追われる必要はなくなった。
 ディルクさんと一緒にという条件つきではあるが、自由に街を散策できるようになったのだ。

 これからは婚約者に声をかけて許可を得れば、自分が好きな時に画材を買いに行ける。
 王城にも出入りできる。

 無能聖女と呼ばれていたのが嘘のような高待遇を受けて、本当にいいのだろうか?
 私はなんとも言えない気持ちでいっぱいになりながら、今までとまったく同じ日常を過ごす。

 真っ白な画布の前に座り、油絵の具をつけた筆を手に取る。
 1枚の絵が完成するか、ユニコーンに「ご飯を食べて、寝なきゃ駄目だよ」と指示を受けるまでは、ひたすら絵を描き続けるのだ。

 ――今日は、何を描こうかな?

 自問自答した私の目に飛び込んできたのは、水色だった。

 ――やっぱり、海の絵がいいよね。

 題材を決めたら、頭の中に思い描いたイメージを具現化するために筆を動かせばいいだけだ。

 画布の上部は、オレンジ色の夕焼け。
 中央には飛び跳ねるイルカや、カモメたち。
 下段は、波紋を描く水面。
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