転生聖女は、ユニコーンと逃げ出した
 今までは画布を前にして指を動かせば、モヤモヤとした気持ちが絵の中に吸収されて行くような感覚があった。
 しかし──ディルクさんのお屋敷で暮らすようになってからは、なんだかいつもと違うがするの。

 ――絵を描くのが、心の底から楽しいって思える。

 精神が安定しているように感じるのは、ディルクさんが私に愛していると囁いてくれたお陰なのかな……?

「――お嬢様」

 ――そうだったら、凄く嬉しい。

 そう口元を綻ばせれば、リルマさんが私を呼ぶ。
 そのあと、ユニコーンの鳴き声が聞こえてきた。

「ユーニィッ。ユニッ。ユーニ!」

 筆を止めて振り返った直後、侍女がこちらに伸ばした手を止める神獣の姿が目に入る。

「3日も飲まず食わずで絵を描くのは、危険です。このままでは、死んでしますよ」
「ユニーンッ」

 私は侍女がそれを払い除けようとする姿を目にして、慌てて筆をパレットの上に置く。

 その後、声をかけた。

「ごめんなさい。集中、していて……」
「ユーニィ!」
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