転生聖女は、ユニコーンと逃げ出した
「たとえば……。あたしみたいな、かわいくて清廉潔白な女の子とかね? キャハッ!」

 公爵令嬢とは思えぬ耳障りな笑い声を上げた女の名は、ノエル・べサリオ。
 シエルの妹だそうだ。

 本当に血の繋がりがあるのかと疑うほどに彼女と真逆の女は、桃色の髪を揺らして俺に迫る。

 ――本当に、目障りな女だ。

 シエルが俺に想いを寄せてさえくれていたら、彼女との結婚を命じられてすぐに面通しを済ませられた。
 そうすれば、関わり合いになるはずがなかった女のくせに。
 俺と結婚する気満々の妹は、隙あらばスキンシップを図ろうと試みてくる。

 これがシエルであれば、拒絶などせず喜んで受け入れるが――。
 好きでもない女に求められたところで、不愉快なだけだ。

「着いてこい」
「はーい!」

 このままアトリエに戻れば、彼女に危険が及ぶ。
 ならば、情報収集がてら別の場所に向かうべきだろう。

「お、お待ちください! 勝手な行動は、謹んでくださいと……! 何度も侍女長から、言われていますよね?」
「そんなの知らなーい!」
「ノエル様……!」

 ノエルのそばに控えていた侍女は、未婚の女性が男性と2人きりで並んで歩くのはあまりよくないことだと青白い顔で進言した。
 しかし、わがまま三昧の女が使用人の言葉など聞くわけがない。
 俺は女性たちを伴い、ある場所を目指した。
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