さよなら、ブルートレイン
 東京の彼氏に気を遣ってそうしているわけではなく、単純に、会いたい人など誰もいないだけのこと。
 帰省すると、必要以上に彼氏から連絡が入り、今どうしてる?男と一緒なのか?などと、猜疑心丸出しで、もう辟易していた。
 東京に戻ったら、とっとと別れよう。

 年に二度の帰省で、ブルートレインに乗る時に、まもなくN駅です、というアナウンスが聞こえると、何故か車窓の外を見てしまう。
 そして、停車中は、ずっと心が揺さぶられる。
 大学を卒業するまでの四年間、いつもそうだった。

 もしかして、あれは初恋だったのだろうか?
 それも少し違う気がする。
 初めて、誰かに信じてもらえたことが、心の底から嬉しかったのだろう。
 親も、担任も、クラスメイトも、誰も私のことなど信じなかったのに。
 季節と共に変わる彼氏もみんなそう。
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