届けたい音、届かない想い~The sound I want to deliver, the feelings that cannot reach.~
授業、現代文

先生は、淡々と授業を進めているけれど、今日はなぜか集中力が続かなかった。

ノートに文字を写しながら、頭の中で、あの(・・)吹奏楽曲が流れてくる。

気づいたらノートを写す手は止まっていて、頭を小さく振りながらリズムを刻んでいた。

朝の通学中にきいたフレーズが頭から離れない。

この曲のユーフォニアムの旋律は、柔らかく、メロディーを支える役割。

思わずうっとりとしていると、

「えー今日は×日だから、希月さん。ここ読んでください」

突然名前を呼ばれて、私はあわてて教科書に目を戻した。

全く聞いていなかったせいで、どこを読めばいいかわからない。

立ち上がりながら、横目で誰かのを盗み見しようとしていると心華が教科書をもって指で該当箇所を差してくれた。

ありがとうと目線で伝え、声を出す。

「えっと、、、日常の中にこそ哲学は潜んでいて、、、」

いきなり当てられて戸惑ったせいか声が少し震えた。

でも、心華の助けがあり、なんとか読み終えた。

授業が終わると、心華が隣の席から話しかけてきた。

「読み、よかったよー」

「え、そう?」

「うん、つまりなくはっきり言えてたしー」

その言葉に私は照れくさくなって、笑ってごまかした。

自分では気づかないうちに何か変わってるのかもしれない。

昼休み、心華と、一緒に勾購買にパンを買いに行った。

「えーどれにしよう」

「わかる、どれもおいしくて迷うよね」

この高校の購買は、パンが売っているのだが、それが地元のパン屋さんが売りに来ている。

それがすっごくおいしくて、人気なのだ。

教室に戻り、心華と席をくっつけて、座った。

「今日、合奏かなー」

「どうだろ、、平日だからないかもー」

「そっか残念」

購買のパンを頬張りながら、話す時間はたのしいし、すごく幸せだった。

心華は、オーボエの旋律をリズムをとりながら口ずさんでいる。

その姿を見て、私は思わす笑ってしまった。

「何笑ってんのよー」

「いや、楽しそうやなって」

「だって、楽しいもん。結来も、じゃない?」

「そうかな」

「そうでしょ、前よりなんか本物って感じだし」

その言葉にうれしくなった。

午後の授業が始まるころには、部活のことで頭がいっぱいになっていた。

明日の合奏で、前よりもうまく吹きたい。
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