「好き」があふれて止まらない!
ピアノ経験者を探せ!
MEBIUSがライブで初めてのラブソングを披露してから一か月。
六月下旬にあった期末テストを終えたわたしたちは久々に音楽室に集まった。
「テストは終わったけど、数学も終わったよ。別の意味で」
体感だと半分以上、点数を取れた気がしない。
「テスト期間は小説書かずに勉強したんじゃねーの?」
中間テストで学年一位だった奏人は期末テストも余裕そうだ。
「したけど数学は期待できない」
「咲茉はちゃんと勉強しただけ偉いって! 俺なんて全教科一夜漬けだから」
「新、励ましてくれてありがとう」
一か月前のライブの日にお互いを名前で呼ぶようになったわたしたち。
最初の頃はぎこちなかったけれど(主にわたしが)、今では名前呼びにもすっかり慣れた。
「お前はもっと危機感持てよ。補習になったら練習時間が減るんだから」
「大丈夫、大丈夫! 毎回、ギリギリの点で補習は回避してるから」
それってすごいけど、大丈夫なのかな⋯⋯?
「はいはい。お喋りはこの辺にして、先に決めなきゃいけないことがあるだろう」
千里先輩がパンパンと手を叩く。
机を四台くっつけて奏人、新、千里先輩がそれぞれ席に着いた。
わたしの指定席はいつの間にか奏人の隣になっていて、自分の席に腰を下ろす。