「好き」があふれて止まらない!
「⋯⋯比高って、変な奴」
ずっと“あんた”だったのに比高って呼んでくれた。
なんだか距離が縮まったみたいで嬉しいな。
「MEBIUSに加入するかどうかは一旦、置いといて歌を聴いてみない? それに旧校舎の音楽室なら人も来ないし自由にピアノが弾けるよ」
「⋯⋯はぁ、わかったよ」
桜路くんはため息をこぼしたあと、下駄箱の扉を閉じた。
「一緒に音楽室に行ってくれるの?」
「つまらなかったら即帰るから」
「ありがとう! 桜路くん」
わたしが音楽室に桜路くんを連れて行くと、奏人たちはすごく驚いた表情をしていた。
そして、もっと驚いたのはその場で一曲合わせた四人の音が、ずっと前から一緒にいたみたいにぴったりと合ったこと。
桜路くんのピアノの腕前はプロ並みで、演奏中の彼はとても楽しそうな表情だった。
「これはもうMEBIUSに入るしかないだろ!」
演奏後、新の言葉に桜路くんは「考えておく」と言い残して帰っていったけれど、桜路くんはMEBIUSに加入してくれる。
わたしにはそんな予感がした──。