温泉街を繋ぐ橋の上で涙を流していたら老舗旅館の若旦那に溺愛されました~世を儚むわけあり女と勘違いされた3分間が私の運命を変えた~
 振り返ると、羽織を片手にもった一鷹さんが、フロントと事務室を隔てる暖簾を潜ったところだった。

「若旦那、河村さんの代わりに早乙女さんが、夜番を引き受けてくれることになりましたよ」
「すず、いいのか?」
「特に用事があるわけじゃないですし」
「寂しいことをいうな」

 幹本さんの後ろからパソコン画面を覗き込んだ一鷹さんは、顎を指でさすりながら、なにか考える素振りを見せた。

「幹本、お前も年末は休め。ここも俺が入るから」
「そうですか? 若旦那がいるなら、いろいろ安心ですが……」

 いいながら、幹本さんは私をちらりと見た。

「すずのことも心配ない。俺が送り届ける」
「いや、むしろそれが心配といいますか」

 ぶつぶつと言葉を濁した幹本さんだったが、一鷹さんがキーボードを叩いて「これでよし」というと、やれやれといったように口許を緩めた。

「じゃあ、急なシフト変更になりますが、早乙女さん、よろしくお願いしますね。河村さんには連絡しておきますから」
「わかりました」
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