温泉街を繋ぐ橋の上で涙を流していたら老舗旅館の若旦那に溺愛されました~世を儚むわけあり女と勘違いされた3分間が私の運命を変えた~

第5話 情報過多すぎて、頭の中は真っ白です

 隼人との遭遇にくわえ、一鷹さんがヴェリテホールディングスの孫であるという真実を知り、私はすっかり頭が真っ白になっていた。
 それに、一鷹さんは私の婚約者だって隼人にいってたけど、どういう意味かしら。

 あの場で隼人を納得させ、私から遠ざけるために嘘をついてくれたのだろうか。一鷹さんは優しい人だから、そういうことなんだろうけど……

 婚約者だっていった瞬間の声が、まだ耳に残っている。
 思い出すだけで、胸がぎゅっと締め付けられた。

 あんな場面だったのに、私は嬉しいって思っていた。本当にそうであったらと期待する狡い女が、心の中にいた。
 
 賢木屋に戻った私は、一鷹さんに連れられて事務室で手首に湿布を貼られた。

「すずちゃん、怪我したのかい?」
「河村さん。これくらい平気です。すぐ仕事に」
「すずはしばらくフロントと事務だ。部屋の案内は、河村さん、代わってくれ。俺も入る」
「それは構いませんが……すずちゃん、顔色大丈夫かい?」

 心配そうに眉をひそめた河村さんは、呼び鈴の音を聞いてフロントへ出ていった。

「……すまなかった」

 二人きりになり、一鷹さんがぽつりといった。
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