白衣の下に潜む静かな溺愛 ―命を救う手と音を奏でる指先のあいだで―
俺は首を傾げた。

美玖をこんなに愛しているのに、馬鹿って事あるのか?

「その大事な天音さんの、両親がいらっしゃってるわよ。」

ドキッとした。

美玖の両親。引いては未来の俺の義理の両親になるかもしれない人。

「いや、まだ早いって。」

俺は目の前で手を横に下ろした。

「はあ?手術前の今、会わなくてどうするのよ。」

「あ、はい。」

里奈さんは自分の櫛で、俺の髪を整えると新しい医療用のシャツも持って来てくれた。

「シャツの前は、顔洗う時にびしょびしょにしてるし。もっとしっかりしてよ。」

「はい、すみません。」

俺は今のシャツを脱ぐと、里奈さんが持って来た新しいシャツに着替えた。

「天音さんのご両親、手術室の前にいるわよ!」

「はい!」
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