白衣の下に潜む静かな溺愛 ―命を救う手と音を奏でる指先のあいだで―
「私は、少しでもピアノが弾けなくなるなら、手術は受けないわ。」

そうよ。私はピアニストだもの。指が動かないのなら、生きてる意味はない。

「天音さん。」

「戻って。私はもう手術は受けないから。」

そう言って、私は渡辺先生から目を反らした。

先生の顔なんて、見たくない。

この人は、私の人生を奪う人なのだから。

「分かりました。今日は戻ります。」

渡部先生は、同意書を手に取ると立ち上がった。

「明日、また来ます。」

「はあ?」

何なの?この先生!

「手術は受けないって言ったでしょ。」

「明日は、気が変わるかもしれないので。」

ニコッと笑うと、渡部先生は病室を出て行った。

「そんな訳ないじゃない!」

私はベッドの上を、右手で叩いた。

自分の人生を奪うような手術、誰が受けるもんか。

私の体は、手術を拒否するように震えていた。
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