白衣の下に潜む静かな溺愛 ―命を救う手と音を奏でる指先のあいだで―
でも一音のズレは、果てしなく襲って来た。

これはもう、プロの段階じゃない。

そして月の光の最期の一音を押すと、私は患者さん達の拍手を受けた。

遠藤さんも拍手の中、私に近づく。

「……やっと、音が戻ってきたな。」

私の指が震えていた。

「でも、音が遅れていたね。」

「……分かりますか?」

「俺は音楽のプロだからね。でも、一般の人には分からないよ。」

その言葉に、不安が過る。

「一般の人って、誰の事ですか。」

「えっ?」

「この世にピアノを習っている人は、溢れかえる程いる。普通の人だって、音のズレは分かる!」

私は右手で鍵盤を叩いた。

「落ち着いて。まだ、リハビリ始まったばかりでしょ。練習すれば、戻ってくるって。」

はぁはぁと、私は息を荒げた。
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